押入れの奥のリコーダー講座 第2回と本番


初回の講座から2週間あいての2回目。
大人な皆さんのこと、予習復習もできるだろうと、
その間を利用してネット上にオリジナル課題曲の音源
(カラオケやマイナスワン含む)をさりげなくアップしておいた。
それが功を奏し、参加者40人のほとんどが自分が演奏するパートを
予習復習していて随分と曲にも馴染んでくれている様子ではあったけれど、
一応、1回目であたっていなかった間奏パートなどを
30分以上かけて栗原くんに丁寧に指導してもらった。


で、細かい音程のことや現場での変更などあれやこれやして
1曲目を通して演奏。
おー、いい感じ。
リコーダーを大勢で吹くと学童感は容易に出るんだけど、
こう、大人の憂いみたいなものもほどよく出た気がする。


と、時計を見ると1時間半も経っている。
いかん。


関島さんは教員免許を持っているだけあって教え方が上手い。
雑談、余興など脱線した話を交えつつも、
ちゃんとそこで話した内容が後の「アメイジング・グレイス」の
アレンジへ全ていかされていくという完璧な台本が出来ていた。


その一端をうろ覚えながらここで紹介すると、
「じゃ皆さんが知っているあのコマーシャルソングのメロディを
ちょっと吹いてみましょうか?」
「○。○○○○〜○」
「あ、いいですね。皆さん吹けますね。」
「ニヤリ」
「じゃ、次に〜」
……中略……
「〜ここで何かオブリガートがほしくなりますよね。」
「誰でも簡単に吹けるようなフレーズ…」
「そうだ、さっきのあのフレーズをここに持ってきてみましょう。」
ってな感じだ。
実際に「ニヤリ」と発音していたので、
雑談していたように見せかけて本当にあれは脚本通りだったのだろう。
上手すぎる。
それを残り少ない時間で駆け足でやってもらったのは非常に悪かった。


アレンジものとして今回とりあげた「アメイジング・グレイス」は、
曲が現場でアレンジされ徐々に肉付けされていく様、
言わば生きた音楽の自由度、柔軟性みたいなものを見て聴いて感じてもらう、
一種のエンタテインメントだったわけですね。
もちろんシンプルに曲を楽しむという目的はありつつ。
常々「ワークショップ」という言葉の意味についてミーティングを
重ねている栗コーダー
今回の「アメイジング・グレイス」のように
実際の現場、仕事場での様子を疑似体験してもらうようなこの企画は、
ただ演奏を習得するだけの講座に比べ、
随分、言葉的にも真意に近いものではないかと思った。
どちらかというと純粋に曲の和声、完成度を追求したオリジナル曲と合わせ、
例えるなら、市場から調理場まで、
いろんな職人の技をかいま見てもらうことが出来たなら
「ワークショップ」はひとまず成功と言えるんじゃないだろうか。


さて、その5日後、本番。
栗コーダーカルテットのライブ。
休憩を挟んだ第2部の冒頭で
ワークショップ受講生を交えた演奏を行った。
1曲目「押入れの奥の宝物」
2曲目「アメイジング・グレイス
すごく緊張した人もいただろうし、
思ったより緊張しなかった人も多かったようだが、
どちらにせよ2曲なのであっという間に終わってしまった、
という印象ではないだろうか。

惜しむらくは、2曲の曲調がちょっと似てしまったのはもったいなかった。
1曲はもうちょっとテンポ感のある曲にしてもよかったかもしれない。
もちろんワールドスタンダードな「アメイジング・グレイス」に比べれば
自作した曲はこぢんまりしたものだけれど、キー、スケール、テンポ感、
いろんなものが似ている。
あやうく拍子まで間違えて3拍子でやりそうになった、はい、自分です。


最後のあいさつで「ドイツ語の“学ぶ”と“教える”はほとんど同じ言葉だ。
実際ドイツの方言では“学ぶ者”とは“教師”のことだ。」
というバーンスタインの言葉を紹介したが、
本当にいざ教える立場になると自分自身が学ぶことも多い。
(実際ギター教室を始めてから随分ギターが上手くなった気がする自分。)


それと、こういう機会、不慣れな旅先のような環境下では、
栗コーダーメンバー間の考え方の違いも浮き彫りになる。
いろんな側面で反面教師のように自分のことを振り返ったりもした。


そこで気付いたことのひとつは、
やはり自分は極端にメロディに固執しているということ。
音楽という枠の中でもかなりそうだし、
日々の生活の中でも、相当に
メロディやハーモニーというものを信仰している気がする。
逆に言えばそれ以外のものをほとんど信じていない。
ハイポジのしんりんちゃんの歌詞に
「歌だけが残る」というフレーズがあるけれど、
自分も卒業生だからってわけじゃないけれど、
本当に深くそう思う。
(これについてはまた改めて。)


だから、今回のワークショップでも「歌」以外の部分
にはまったく無頓着で無愛想な自分を発見した、
というわけなのでした。


勉強になりました。
次の機会があればまたよろしくです。